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大阪市阿倍野区で過ごしていた、あの頃。
今思い返しても、どうかしている出来事ばかりだったと思う。
もう戻れない、愛しい記憶です。
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コツリンが亡くなった翌日、僕はお通夜に参列するため、大阪へ向かった。
会場は、コツリンが住んでいたマンションの、一階にある多目的スペース。
僕もよく遊びに行った場所だ。
少し遅れて到着すると、焼香を済ませたみんなが集まっていた。
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コツリンは、本当に死んでしまったのだ。
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顔を見たら、僕はまた、泣いてしまうのではないか。
そんなことを思いながら、棺桶を覗くと、
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コツリンの胸元には、この場に全く似つかわしくない、エロい巨乳美少女フィギュアが飾られていた。
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予想もしない状況に、僕は思わず吹き出してしまった。
というか、フィギュアが気になってコツリンの顔どころではなくなってしまっていたのであった。
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もちろん、みんなもひとしきり笑ったようである。
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聞けば、一年程前から、これまではアイドルやAVにまみれていたコツリンの部屋には、
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美少女アニメフィギュアがどんどん増えていたと言う。
あんなにアイドルやAV女優が…いや、「女性」が好きだったコツリンが、ある程度自分の死期が近いことを悟り、もう二度と恋愛が出来ないことを覚悟したときに、アイドルとはいえ生身の女性に対し思い入れを持つことが辛くなったのだろう。
その結果、アニメやフィギュアといった2次元のものに気持ちが向かっていったのである。
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病室から、阿倍野の街を見下ろしながら、コツリンは何を想っていたのだろう。
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なんだか、色々考えさせられてしまった。
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頑張って生きていれば、僕らには、どんなことにも可能性があるんじゃないのかな。
僕は、そんなことを想っていた。
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イトウさんはそんなことを想っていたようだ。
悲しさみたいなものが無くなった僕は、不謹慎にも、この通夜がちょっと面白くなってしまっていた。
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そうこうしていると現れたのは、
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コツリンが以前好きになってしまって、例の事件を起こしたNちゃんである。
Nちゃんがお焼香をしようとしたその瞬間、
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あの一件に関しては、コツリンはしつこく呪っているようである。
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ちょうど阿倍野は、桜の季節。
夜桜がキレイな夜だった。
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その晩、僕たちはかつてと変わらぬように笑い、コツリンのことを語り合ったのだった。